A Journey To Surrey Quays

Half the truth and half the lie

トウキョウソナタ/黒沢清



 黒沢映画を見ると、真正面に飛んできたボールを当たり前のように(決してファインプレーではなくて)グラブに収めて一塁にスローイングする守備の上手な内野手を見ているような安心感があって、本当の映画を見ているな、と思える。こっちを覗き込んでいる少女、暴風雨がふきこむ窓、定期的に鳴る電話、階段落ち……印象的なカットが幾つかあった。

 
 正直、『カリスマ』は僕には全く理解不能だったし、『回路』ですら完全には理解できなかった。そんな難解な黒沢作品の中では、とてもわかり易い部類の映画。単純に話が面白かったりするのだけれど、ちょっと考えてみると、次男の才能を引き出すピアノ教室の先生*1は勿論、途中乱入してくる強盗ですら、もしかするとラストシーンの奇跡を演出する一員だったりもして、何とも言えない気持ちになる。