A Journey To Surrey Quays

Half the truth and half the lie

ゴールデンスランバー/中村義洋




 原作、伊坂幸太郎。『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋が監督。伊坂&中村のコンビなら大失敗はないだろうとの期待を裏切らない良作。


 首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公、青柳(堺雅人)と、青柳を追い込む国家権力との戦いが縦の線だとすれば、そんな青柳の逃亡劇に手を貸す学生時代の仲間達との「信頼」が横の線であり、縦横の線が織り成す程よい青春映画となっている。
 爆発や花火のCGは日本映画にありがちなショボサなのだけれど、伊坂作品らしく学生時代の懐かしい記憶を刺激してくる。2時間を越えるのに長く感じなかったのは、貼った伏線が終盤にかけてしっかり回収していく巧緻なプロットによるもの。流石だなあ。


 春樹ナイズドされた妙なインテリ臭さがあるので、正直、伊坂幸太郎オールオッケーな読者ではないけれど、伊坂作品の根底に流れている「信念」は、とても好きだし、小説家として一番大切な要素だと思っている。


 気になった点。 


1)警察庁の指揮を執る、佐々木一太郎役の香川照之。青柳を捕らえ、護送していく車中で、青柳に自首を薦める為に車を止める。先に車から降りた香川照之が、青柳に降りるように促すシーンが印象的。車中からドアの方向にカメラは向いていて香川照之の口元から上は見えず、ブラックスーツを着込んだ体、だけ、が、見える。冤罪である青柳にしきりに自首するように理不尽な要求を仕向けるカットは、映画的であり、とても気味が悪い。この映画の場合は、国家権力の怖さを描いた、というよりも、「日常誰にでもおきる理不尽な事」という程度の意味合いなのだろうけれど。
 
2)主人公の青柳に濡れ衣をきせる為に、2シーンだけ登場の相武紗季は『ブザービート』の時に見せた悪女の片鱗を熱演してて、とても良い。この方向性でお願いします。ゾクゾクします。