A Journey To Surrey Quays

Half the truth and half the lie

 東京物語/小津安二郎



 少し前のネプチューンの話だけれど、面白くなるかどうかって結局名倉にかかってたんだよな。ホリケンとタイゾーの暴走を名倉がどこまで許すか、どこで止めて突っ込むか、にかかっていた。


 『東京物語』の上映時間136分の内、120分は全く名倉が画面上に存在せず、パラグライダーは空まで飛んでいくわ、ハラダタイゾーは自己紹介をするわで、演者各々好き勝手にぼけまくり。誰一人としてボケに対して突っ込まない。残りの16分で話はまとめに入り、原節子が、暴走するホリケンとタイゾーへと突っ込みに入る素振りを見せるので、あなたが名倉だったの? と画面をよくみるが、実はそれは名倉に良く似た只のタイ人だった。


 この映画は1953年に公開。尾道から東京に出てくる実の父母に対する独立した子供達のぞんざいな振る舞いを通して家族という制度の崩壊を描いている。ないがしろに扱われる父母、周吉・とみの設定年齢は、当時、昭和30年前後の平均寿命に迫るか越すかという位に高齢で、交通網がまだ発達していない時代、東京に来るだけで蒸気機関車に乗って18時間かかるという重労働なのだった。


 わざわざそんな思いをして、東京まで出てきてるのに、子供達は、親を親と思わない発言や態度をするので、「家族なのに何でそんなに冷たいの?」とついつい、見てるこっちが突っ込んでしまう。


 要するに小津安二郎が突っ込みの名倉潤役に選んだのは、映画を見てる僕らであって、いつの間にか映画の中に引きずりこまれているのです。