A Journey To Surrey Quays

Half the truth and half the lie

キムギドクが死んだ

 愛媛県今治の離島にいる。離島といっても、車で来ることが出来るのだが、知り合いが大阪に戻る予定があり、空いている期間を使ってみないか、と言われたので、少し前に来て滞在している。幸い仕事はリモートで可能なので、気分転換の意味もあるのだが、愛媛のここだと5LDKの一戸建てで家賃が5万円台と聞いて、クラクラしてしまう。建物自体は1950年ぐらいに建築されたものらしいが、8年ぐらい前にリフォームされているので、内装はとてもきれいだし、少し歩くと、しまなみ海道を望むことも出来るので、ロケーションは最高である。以前にしまなみ海道に自転車でツーリングに来たことがあり、とても好きな場所だったので一度チャンスがあれば住んでみたいと思っていたので、まさに今回のチャンスは願ったりかなったりといったところ。

 

 島の夜は真っ暗になってしまうのだが、車でスーパーに買い出しにいった帰り、多々羅しまなみ公園のわきに車を止めて、携帯を見ていたら、キムギドクの訃報を目にした。

 

 時計を見ると時刻は22:43分。12月の夜はかなり冷えるので、スーパーで買った缶コーヒーを飲みながらキムギドクのフィルモグラフィーを見返しててみた。

 

 『春夏秋冬そして春』では105分の短い時間で人生の移り変わりを見立ててみせて、『うつせみ』では、無言劇の中で叶わぬ想いを語った。映画は素晴らしい。ただ素直に追悼できないのは、やはり性暴力の噂が絶えなかったからである。

 

 何となく韓国で報道されていたのを耳にはしていたが、セクハラ疑惑という軽い言葉で日本に伝播されるよりも、もっと深刻な犯罪行為が行われていたということが、映画監督のヤン ヨンヒさんによってTwitterで語られている(下の一連のツイート)。

 

 

 (自分にとっては)一次情報ではないので、全てが真実なのかどうかはわからないが、一部事件に関しては韓国で裁判も起きており、ギドクが負けているとのことなので、この呟きの中の事柄にも少なからず真実が含まれているのかもしれない。亡くなってしまう前に、明らかにしてほしかったなと思ってしまうのである。

 

 キムギドクの作品には孤独や暴力、性のネガティブな側面が多く描かれており、ギドク自身が恐らく内包していた部分を消化して作品作りしていたのかもしれないが、作品にするだけで、解決できておらず、本当にこのような暴力として表出してしまっていたのなら、これは本当に許されることではないだろう。ただただ残念だ。

 

 ネガティブな感情をギドクが作品として昇華させることが出来るのはスゴイ才能だと称賛していたファンたちにとっては、ギドクの死というのは非常に複雑な問題を投げかけてくる。自分もその一人だが、死ぬ前に真相を知りたかった。

 

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今日の1曲 藤井 風(Fujii Kaze) - "青春病(Seishun Sick)"

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